<マハーバーラタ・45〜48>
45、カルノのラクササ対決 ドゥルユドノ(☆)の所に、弟カルトマルモ(☆)が戦場報告に来た。 カルトマルモは、63番目の弟と言われるコラワ百王子の一人で、コラワ出陣の際には、兄弟の勢揃いを数えるため登場し、その数の多さに謁見所から一度姿を消して入って来ながら数え、ドゥルユドノに揃った事を報告する。 その数も最後にはドンドン減ってしまうのだが……。 戦況報告を聞いたドゥルユドノは、パンダワが、その師ドゥルノ(☆)へ太刀打ちする気概を無くした様子に、改めてドゥルノを頼もしく思った。が、その報もドゥルノの戦死で締め括られ、ドゥルユドノは落胆し悲憤した。 サルヨ(☆)もこれを機に、ビスモ(☆)、ドゥルノと同じく、やはりドゥルユドノ(☆)に停戦と和平の説得をする。サルヨはドゥルユドノにとって舅であったが、スンクニ(☆)は、「総統はドゥルユドノであって、家臣に命令される謂れはない」と高飛車に跳ね付けた。 妻バヌワティ(☆)に頭の上がらぬドゥルユドノは、バヌワティの実父サルヨを怒らせたのでは、と動揺し、カルトマルモにドゥルソソノ(☆)を呼びに行かせる。 ドゥルソソノは子供に輪ゴムをあげて愛想を振り撒く無邪気な男だったが、運動不足の肥満で、巨体ゆえにパンダワのビモ(☆)にライバル心を持っていた。 今度こそ自分が戦闘指揮者に命じられると喜び勇んで伺候すると、ドゥルユドノからいきなり王妃バヌワティ警護のための帰国を命じられ、ガッカリする。 片やパンダワ側も、アビマニュ(☆)、ドルポド(☆)、マツウォパティ(☆)とその三王子といった味方を失い、またビスモやドゥルノ(☆)といった恩師の死を嘆き(この時点で、まだマツウォパティが生きていて、ともに嘆いている話もある)、ユディスティロ(☆)が領土返還を拒否して停戦を提案した。が、報復を誓ったビモが反対し、戦争の続行は決した。 次の戦闘指揮者にガトゥコチョ(☆)が志願した。アビマニュを失った叔父アルジュノ(☆)に同情したのと、夜間の戦闘が必至であったからだ。彼は夜目が利き、夜空を人に気付かれず飛翔する超能力を持っていた。この役目を拝命すると、ガトゥコチョは母アリムビ(☆)に別れを言いに行き、アリムビは息子のためにラクササ軍団を託した。 一方、ビスモ、ボゴデント(☆)、ガルドパティ(☆)、ブリスロウォ(☆)、ドゥルノと次々に戦闘指揮者を失ったコラワは、ついにカルノ(☆)を戦闘指揮者に任命した。 やってきたガトゥコチョのラクササ軍団を見たカルノは、瞑想して自分も体内から巨大なラクササ達を出現させた。 そのとき天界のグル(☆)は浮遊するコロブンドノ(☆)の霊に気付き、出番を指図した。 コロブンドノは松明を持っていたから、夜空でガトゥコチョに会い、「今こそ借りにしておいた命を捨てて貰う」と迫った。ガトゥコチョ(☆)は承諾し、「かわりにカルノ軍のラクササをやっつけて欲しい」と頼んだ。 コロブンドノは承知し、早速ラクササの群れに突進したが、どれも恐ろしい形相のラクササ達、咄嗟に敵味方の区別もつかず、当たり構わず蹴散らした。夜の闇で起こるこの様子は、ラクササが現われては消えるだけに人々の目に映った。 46、ガトゥコチョの戦死 不満げにアスティノ(☆)国に帰り、バヌワティに伺候したドゥルソソノだったが、戦況を聞くたびにコラワ側の訃報に喜び、パンダワ側の訃報に涙するバヌワティ(☆)に、ドゥルソソノは「コラワの王妃だから尊敬され、贅沢に暮らしていられるのに」と不平を募らせる。 バヌワティも負けず「皆が戦場で苦しい思いをしている時に、なぜ一人逃げて来た」と問い詰め、バヌワティ警護がドゥルユドノ(☆)の命令だと知ると、さらに畳み掛けて、そんな命令しか貰えない男だと軽蔑する。 「番をされる方にも問題がある」と口を滑らせたが最後、ドゥルソソノ(☆)はさんざん言葉の真相を問い詰められ、「アルジュノと通じているからだ」と答えてしまう。 バヌワティは逆上し「売春婦の汚名を負わされた」「パンダワが勝つに決まってる」と喚きたてた。 屈辱を味合わされたドゥルソソノは、スンクニ、カルトマルモらに止められるのも聞かず、バヌワティ警護を放棄し戦場に戻る。 スティアキ(☆)がドゥルソソノ襲来を告げ、ビモはこれを迎い撃つ。スティアキは戦場に返してカルトマルモ(☆)と対戦し、これを敗走させる。痛手を負ったのか、カルトマルモは終戦まで身を潜ませ、後にアスティノ王宮のバヌワティ(☆)の前に報復にあらわれる。 スンクニ(☆)はガトゥコチョが夜目が利く事をカルノに知らせた。カルノ(☆)はガトゥコチョを倒すには、スンジョト・クント(剣☆)しかないと思った。一度使えば持ち主グル神の元に返ってしまう武器で、アルジュノとの一騎討ちに用いるべきだったが、今はやむなしとカルノはガトゥコチョに向けて放った。 ガトゥコチョはこれに気付いてかわし、逃げたが、クントはしつこく追って来た。 逃げたガトゥコチョ(☆)にコロブンドノは「自分も約束を守ったのだから、お前も守れ」と後を追ったが、姿が見えない。クントもついに力尽き、落下を開始しかけたが、コロブンドノ(☆)はこれを手に握ると、妹アリムビの声音をまねてガトゥコチョを呼び回った。 母アリムビが危険な戦場に来たと勘違いしたガトゥコチョは、声を発して答え、コロブンドノに握られたクントは、ガトゥコチョの臍に突き刺さり、彼の体内にあるクント(☆)の鞘へ収まった。 コロブンドノは喜んでガトゥコチョの魂を連れ去ろうとしたが、ガトゥコチョ(☆)が最後に「カルノの戦車を粉砕して欲しい」と頼んだので、コロブンドノはガトゥコチョの死体を空から落とした。カルノは危機一髪で身をかわしたが、その馬車と軍隊は木っ端微塵に撃破した。 47、ドゥルソソノの惨死 息子ガトゥコチョの死に錯乱したビモは死体に近付くが、クレスノ(☆)に止められる。死体からは、死んだハズのガトゥコチョの声が怪しくビモ(☆)を呼ぶ。 声の出所が臍だと突き止めたクレスノは、爪で臍をこじあける事を指示。ビモが言われた通りにすると、ガトゥコチョの臍からは、近寄った者を噛み殺す使命を帯びたプロジョムスティ(☆)が飛び出した。彼も一族の得意技である親族の声音のマネに長けていた。 使命を果さず姿をあらわしたプロジョムスティは昇天する。 (プロジョムスティついては、一族の仇パンダワの血を引くガトゥコチョ(☆)をプリンゴダニ(☆)王位につける事に反抗したブロジョドゥント(☆)が、プリンゴダニに反乱軍を向かわせたので、ブロジョドゥントと一騎討ちをして相果てた、という話もあるようだ) ガトゥコチョの死に、母アリムビ(☆)は息子の火葬に身を投じて後を追い、父ビモは猛り狂ってカルノを追ったが、カルノ(☆)は海中に身を投じて逃げた。ビモはカルノを追って、ドゥルソソノと出あった。二人とも棍棒の使い手で、激烈な戦いを繰り広げたが、圧倒されたドゥルソソノは逃げ、スラユ川(☆)を行きつ戻りつしてビモを翻弄し、隙を見て反転するつもりだった。 が、スラユ川の川底では、かつてドゥルソソノ(☆)に無理やり人身御供にされたタルコとサルコ(☆)の怨霊が、ドゥルソソノの脚を捕らえ、川底に引きずり込んだ。怨霊との格闘で力をそがれたドゥルソソノはビモ(☆)に捕まり、川から引っ張り上げられ地に顔を押し付けられた。 クレスノは正確に復讐の誓いを実行させるべく、近寄ってビモを諭し、ビモはかつて誓った通り、ドゥルソソノの両腕をもぎ取り、首を爪で刎ね、両足を切り離し、更にはらわたをえぐり、ドルパディ(☆)もかつての誓いの通り、ズタズタの胴体から流れた血で髪を洗い、サイコロ賭博以来はじめて髪を結い上げた。長くパンダワの執念とした一つの復讐が遂げられた。 軍師クレスノはアルジュノに、報復や悪計を働く忍びの者の侵入に注意を促した。 復讐心に燃えるのはパンダワ陣営だけでなかった。かつてアルジュノに騙されて、兄妹で契りあい生まれたジョトギンバル(☆)の子コロスレンギ(☆)は、イラワン(☆)と相打ちにして果てたが、ジョトギンバルの家臣アルドワリコ(☆)が、今は亡き父子の国を担って王となり、ジョトギンバルの息子と称して立ち上がっていた。 また、すぐ下の弟ドゥルソソノを失ったドゥルユドノの悲嘆は激しく、自分が戦闘指揮者に立つといきり立つのを、カルノが辛うじて慰め、今度こそアルジュノ(☆)と雌雄を決する、と不断の誓いを口にした所であった。 48、スンジョヨの死 新しく戦闘指揮者となったカルノには、戦車に日傘を差す役にドゥルノの息子アスウォトモ(☆)が選ばれ、戦車の操者にカルノは舅サルヨ(☆)を指名した。サルヨはこれに激怒するが、ドゥルユドノの懇願に折れて引き受けた。 戦を前に、カルノ(☆)が愛妻スルティカンティ(☆)に別れを告げに行くと、妻は不吉な夢におびえていた。夢ではカルノが大海に溺れ、やっと乗った小舟も沈没するという。不安に駆られたカルノは、召使女スウェゴ(☆)にアルジュノ暗殺を命じた。 ヨモウィドロ(☆)の子スンジョヨ(☆)は、これまでコラワ側にいたが、アルジュノ第一夫人スムボドロ(☆)と第二夫人スリカンディ(☆)の身を寄せる後方陣営に来て、「パンダワに付きたい」と志願した。 戦士でもあるスリカンディは怪しみ、兵士の忠義を持ち出してスンジョヨを追い払おうとしたが、スンジョヨはパンダワへの忠誠を試すテストをして欲しいと頼み込んだ。 スリカンディが「カルノの首を取って来い」と答えると、スンジョヨは大喜びで飛び出して行くが、スンジョヨ(☆)にカルノが倒せるはずがないと思ったスムボドロは、かつてパンダワが焼き討ちされた時、父ヨモウィドロの命を受けたスンジョヨが助けてくれた話をして、スリカンディを諭した。 スリカンディ(☆)は後悔し、スンジョヨを止めようと、父ドルポドの宰相デストクトゥ(☆)に後を追わせた。が、デストクトゥはスンジョヨとは別の道に行ってしまい、アルジュノ暗殺に来たスウェゴと遭遇。両者は相打ちに果てた。一方スンジョヨはカルノ(☆)に会え、撃ちかかってカルノに一撃で殺される。 スリカンディはスンジョヨ(☆)の敵討ちに打って出るが、カルノは女と見て相手にしない。スリカンディは弓矢を放って、カルノの髭を射落とした。片方だけの髭をスンクニに笑われたカルノは、スリカンディの胸当ての紐を弓矢を放って切った。スリカンディは乳房を隠して退き、夫アルジュノに訴えた。 こうしてついにカルノ(☆)とアルジュノの対決の時が訪れるに到った。 |
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