<マハーバーラタ・09〜12>
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9、飛ばされたコラワ兄弟 グンダリ(☆)の恨み心は消えず、その弟スンクニ(☆)とともに、我が子である百人の王子達(以後コラワと総称する)に対し、執拗なライバル心を煽って育てた。 ゆえにコラワ兄弟はパンダワ兄弟に、シーソーで重さ比べをしようと持ち掛ける。重さで勝った方がアスティノ(☆)国の王となる権利があるというのである。 これを見ていたのはクレスノ(☆)であった。片方にコラワ百人が乗り、もう片方にパンダワ兄弟が乗ると、100対4で不思議とシーソーはバランスを保った。クレスノが「パンダワに一人足りない」と指摘し、クレスノ(☆)はその一人を探しに旅に出る。 こうして一人パンダワから離れていたビモ(☆)は、凧をあげている所をクレスノに探し出される。この時ビモは非常に小さな子供で、しかも名を尋ねられて別名で返事をする。 しかしその声の尋常でない大きさに、クレスノはビモであると見抜き、探している目的を話すと、ビモは突如変身して大きな姿となった(以後、巨大な姿のまま登場しつづける)。 クレスノがビモ(☆)を連れ帰るや、ビモはシーソーのパンダワ側に飛び乗り、コラワ達ははずみで蜘蛛の子を散らすように飛び散った。その勢いで、辛うじて大地に叩き付けられアスティノ国に留まった者もいたが、他国にまで飛ばされた者もいた。 風の上の国にまで飛ばされた王子にボゴデント(☆)、クルティペヨ(☆)、ガルドパティ(☆)、ウレソヨ(☆)ら大勢がいて、彼らは「後に戦争が起こった時、アスティノに集結せよ」という神の定めに従った。 ビモについては、鹿を射た父パンドゥ(☆)が罪のために火山に投じられた所を救出した話もある。しかし神の赦免を得られず、呪いは解けない、と展開される。 結局パンドゥ王は性欲を抑えきれずにマドリム(☆)と契り(「触っただけ」という表現にもしばしば出会う)、命尽きてしまう。 マドリムはパンドゥを死なせた悔いから、パンドゥの肉体を焼く祭壇の炎に飛び込んで後追い自殺し、クンティ(☆)が五王子の母として養育した。 一人残ったクンティに、スンクニ(☆)は下卑た横恋慕の心を抱き続けた。 パンドゥ(☆)王の跡を継ぐべきは長男のユディスティロ(☆)であったが、成長するまでの間、パンドゥの兄で盲目のダストロストロ(☆)が代行で継承し、パンダワとコラワ合計105人の王子を不老不死のビスモ(☆)が後見し、クレスノの兄ボロデウォ(☆)は武芸を教えた。 またナクロ(☆)とサデウォ(☆)の叔父にあたるサルヨ(☆)は、妹マドリムの死を悼むがゆえ甥のパンダワを愛し、その三女バヌワティ(☆)とパンダワ三男アルジュノ(☆)は、幼いながらに相思相愛となるなど、サルヨもパンダワに欠く事のできない庇護者の一人であった。 10、軍師ドゥルノ 外国から来て、パンチョロ(☆)国王位を継いだドルポド(☆)には、ドゥルノ(☆)という従兄弟がいた。 野心家のドゥルノは、先にジャワで出世したドルポドを頼りに、ジャワに赴こうとした。 大海の岸に到着し、川の向こうに辿り着くため、ドゥルノは大声で「ジャワに渡してくれる者があったら、男なら兄弟に、女なら自分の妻にする」と叫ぶ。 すると天馬が到来し、ドゥルノを乗せてジャワに運んだ。ジャワに着くや天馬は一子を生み落とし、この馬が天界の美女ウィルトモの化身であった事がわかる。 ウィルトモ(☆)は天から我が子を見守るとして天界に戻ってしまったので、ドゥルノ(☆)は我が子に、駿馬に所以するアスウォトモ(☆)という名を付け、同じように天界の妖精を母に持つクルポとその妹(☆)に預けてドルポドを訪ねた。 パンチョロ国の王宮に入りドルポドを見つけるや、懐かしさのあまり、ドゥルノは大声でその昔の名を叫んだ。しかしドルポド(☆)の宰相ゴンドモノ(☆)はすぐさまドゥルノを捕え、王を侮辱した者として烈しく袋叩きにした末に追放した。 これがため、ドゥルノの耳と鼻は曲がり、歯茎が見える醜悪な顔となったので、ドゥルノはドルポドを憎み、見返してやるために苦行を重ね、いつか恨みを晴らそうと時を待った。 苦しい旅を続けるうち、アスティノ国に入り、古井戸の底に落ちた鞠を見て騒ぐ子供達、コラワ百王子とパンダワ五王子たちを見付けた。 ドゥルノ(☆)は茅草で鞠を取り出してやり、これをきっかけにアスティノ国に仕官がかない、ビスモを援けて、王子たちの学芸と武芸を仕込む軍師として重用された。 ドゥルノに弟子入りした者も多く、スリウェダリ(☆)国の若い王パルグナティ(☆)もその一人であり、彼の弓の技能は弟子達の中でも卓抜していた。 しかし弟子達の中でドゥルノが一番愛したのは、パンダワ兄弟の三男アルジュノであった。それゆえドゥルノは、パルグナティには正しい技術を教えなかったが、パルグナティは自身で技術を会得したので、若いアルジュノはこれを妬んで師であるドゥルノに訴えた。ドゥルノ(☆)はこれを聞き、いきなりパルグナティの左手首を切り落とした。 パルグナティ(☆)の左手はアルジュノの左手首に取り付き、アルジュノはこれ以後、無双の弓の名手となったが、パルグナティは、この怪我が原因で死に、その間際に「来るべき戦争に際し、この恨みをはらす」と言い残して、時間待ちの天界でドゥルノの死を待つ事となる。 また、こうしてアスティノ(☆)国で力をつけたドゥルノは、やがて恨みの相手ドルポドのパンチョロ国から半分の領土を奪うに到った。 死んだパルグナティには妻と子がいた。妻は夫の死を嘆き、祭壇に火を燃え上がらせて中に入って死んだ。 息子をアルジュノパティ(☆)と言い、父母の事を知らされずに育つ事となった。 やがて成長したアルジュノパティは、父母の事を聞きに、人の生死を支配するグル(☆)神を訪ねて行った。が、グル神の住む天界では、門番が扉を開けてくれず、アルジュノパティは押し入ってグル神に会った。 無礼を咎められたアルジュノパティは、醜いラクササに姿を変えさせられ、グル神に「元の姿に戻りたかったら苦行所へ行け」と命じられる。 苦行所では一人の僧が彼を引き受けた。この僧は実はクレスノだった。クレスノ(☆)は何年もアルジュノパティ(☆)を苦行させ、やがて元の姿に戻す魔除けを施すにあたって、「自分のどんな要求にも従うこと」と約束させた。 アルジュノパティはやがて父パルグナティ王の後を継ぎ、スリウェダリ国王となる。 11、カルノ登場 コラワ百王子の長兄ドゥルユドノ(☆)は、迷いの多い気弱な性格だったが、母グンダリ(☆)やその弟で今は宰相の地位にある叔父スンクニの影響もあって、次第にパンダワへの敵対意識を強め、徐々に倣岸不遜な態度を取る若者になった。 コラワ次男ドゥルソソノ(☆)も大威張りだったし、その他のコラワ兄弟達も、臆病で大した能力も無い癖に、高慢さだけが共通していた。 武芸を仕込まれたコラワとパンダワの兄弟達は、その成果を示すべく、アスティノ国の長老たちの前で開催された競技会に出た。競技の的はドゥルノが作った。 コラワもパンダワも誰一人として命中せず、見事に射抜いたのはアルジュノ(☆)だけで、弓以外のあらゆる武芸も秀で、観客じゅうの称賛を浴びた。 そこへアルジュノに挑戦した男がいた。クンティが生み、アスティノ国で育っていたカルノ(☆)だった。 カルノもアルジュノに劣らぬ武芸達者を披露したので、アルジュノを自分の一番弟子と誇っていたドゥルノは怒り、アルジュノに勝負を薦めた。 この勝負に天界までもが加勢しあった。天界守護神インドロ(☆)は我が子アルジュノに、太陽神スルヨ(☆)も、我が子カルノにそれぞれ力を貸したため、勝敗は決しなかった。 審判はドゥルノ(☆)の義兄クルポ(☆)だった。彼は両者を引き分け、カルノ(☆)に名乗りを薦めた。 しかし、卑しい馭者の子にすぎないカルノは名乗れず、ビモはカルノを罵った。 するとパンダワへの対抗心からドゥルユドノは「勇者に素姓は関係ない」とカルノを抱きしめて登場を喜び、アスティノ国の領地から国を与えてカルノを王として遇した。 12、パンダワ焼き討ち事件 パルグナティのような特例もあるものの、少なくてもパンダワ達は、コラワ達よりは学芸も武芸も優れている事が判明した。 ドゥルユドノとドゥルソソノはパンダワ兄弟への嫉妬と焦りを強め、ドゥルソソノは、自分はコラワにおけるビモである、と自認したが、実態は体の大きさしか似ておらず、その体を前後左右に揺するだけの滑稽な男だった。 二人は特にビモ(☆)の強さを邪魔に思った。ことあるごとに陥れようと画策したが、正々堂々の勝負では到底適わない。 となると、あとは小ずるい手しかない。ある時彼らはビモを誘って騙し、毒をもって、動けなくなったビモを木の根で縛って川に投げ落とした。 しかし川の底にも毒蛇がいてビモに噛み付き、この毒ともられた毒が中和を起こしてビモは気を取り戻し、蛇と格闘して倒すと地上に戻って来た。 こうした画策を何度も重ね、何度も失敗する内に、ついにダストロストロ(☆)王がパンダワ長兄のユディスティロに王位を譲る時が来てしまう。 妃グンダリは反対するが、コラワとパンダワの叔父ヨモウィドロ(☆)は、領地も一町のみダストロストロ親子に与え、後は全て返すべきと主張した。 善意のダストロストロは弟の意見を喜び、さらに就任の祝いとして壮麗な館を新築しようとする。 ドゥルユドノとスンクニ(☆)は建築の手伝いにかこつけて館の内部を熟知し、燃えやすい材料を用い、火薬を仕掛けておき、館が完成するや、ダストロストロ王主催の祝いの饗宴を終えた深夜、入館したクンティとパンダワ兄弟達を焼き討ちにした。 |
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