<マハーバーラタ・01〜04>

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01、 パンダワ祖父アビヨソ誕生

パンダワを七代目に数える系譜は、まず始祖が苦行の聖地を得た。二代目は倒した魔王の屍から「カリモソドの書」()を、その家来の屍から超能力の矢を得た。
この系譜の四代目ポロソロ)は、パンダワの曾祖父である。

ポロソロは厳しい修業中、神々の要請で一時苦行を中止し、森を開拓して国造りに励んでいた。それが、この物語の主要舞台であるアスティノ)国である。
ポロソロジャムナ川の岸辺で、パンダワ曾祖母サティヨワティ)に出会った。

サティヨワティは、ウィロト)国王マツウォパティ)の妹にあたる。
サティヨワティの父は狩猟に出た先で、おのが妃を想うあまり洩らした精液を、木の葉で拭って川に捨てた。するとその葉を飲み込んだ魚が女の子を産んだ。これがサティヨワティである。

サティヨワティは漁夫に拾われ育てられた魚の臭いのする女性だったが、ポロソロはその魚臭をなおして結婚し、パンダワの祖父となる五代目アビヨソ)を得た。

ポロソロにはアビヨソの他にも異腹の子が大勢いて、男子達はマツウォパティ王の家臣となり、娘レコトワティ)はマツウォパティ王の妃となる。
ポロソロ)はなお国造りに励んだが、サティヨワティ)は川辺を離れる事を嫌い、ジャムナ川の岸辺でスンタヌ)に出会う。

スンタヌ王はある国の僧で、天界を追放された神の子孫でもあった。
かつてスンタヌは、ガンガ川で女神ガンガ)に一目惚れし求婚した所、生まれて来る子供はすべて川に捨てる、と条件を突き付けられた。

結婚後ガンガは約束通り、子供を生むたびに次々と7人まで川に捨てたが、8人目のビスモ)が生まれた時、ついにスンタヌに殺害を止められたため、ガンガは天界に帰ってしまう。
8人の子は前世、神族にありながら神の牛を盗み、8人目のビスモは盗みの頭目だったため最も罪が深く、長く下界に留まる運命だったのである。

スンタヌが新たにサティヨワティを見染めたので、ポロソロは妻のサティヨワティアスティノ国をスンタヌ)に譲り、自身は再び山中に戻って苦行を再開。息子アビヨソも又、山に入って苦行に励んだ。

ビスモは自分の存在が父スンタヌの悩みの種にならぬよう、後継者の座は、父スンタヌと継母のサティヨワティとの間に生まれる子に譲ると約束し、また、自分の子が後継者の座を狙う危険があるとして、生涯妻帯しない事も同時に誓う。
スンタヌはこれに感謝し、神に祈りを捧げた結果、神から「自分が望む時以外は死なない」という力をビスモに与えた。

スンタヌサティヨワティの間には二人の王子が生まれるが、その後間もなくスンタヌ)王はこの世を去った。
このスンタヌに所以する者といえば、苦行者と水浴中の天界の妖精との間に生まれた、クルポ)とその妹がいる。兄妹はスンタヌに引き取られ育てられ、クルポは後で登場する。



02、パンダワ父パンドゥ誕生

ビスモスンタヌサティヨワティ)の間に生まれた二人の義弟のために、ある国に出かけ婿取りの競技に参加して、二人の王子を見事に打ち負かし、彼らの妹、長女オムボ)と次女アムビコ)、そしてパンダワ祖母となる三女アムバリコ)の三王女を手に入れる。

次女アムビコは上の王子と、三女アムバリコは下の王子の妻となる事を承諾するが、長女のオムボだけは、競技の勝利者であるビスモ)との結婚を望み、ビスモの後を慕って追ってくる。

生涯妻帯しない誓いを立てたビスモはこれに困り、矢をつがえて脅すが、誤って矢を放ち命中してしまう。オムボは「のちに戦争が起きた時、復讐をとげる」と呪いの言葉を残し、天界には上らず"時間待ちの天界"でビスモの死を待つ。

この事件以来、ビスモは父スンタヌの故国に帰り、苦行にふけったが、やがてアスティノ国に戻る事となる。二人の弟王子が次々と死に、アスティノ国は早速、継承者に事欠く有様に陥ったからだ。
王妃サティヨワティは、ビスモ)に、二人の王子が残した妃アムビコアムバリコを嫁がせて王子を得ようとしたが、ビスモはかつて立てた妻帯拒否の誓いを盾にこれを拒む。

窮したサティヨワティは、前夫ポロソロとの間に儲けた一子アビヨソを山中より連れ戻し、二人の妃を娶わせて王子を得ようとしたが、アビヨソは長い苦行にあったために、その容貌は怪異で恐ろしかった。

アムビコ)はアビヨソ)を見た時に目を叛けたため、生まれた王子は盲目のダストロストロ)だった。これがコラワ百王子(悪役)の父である。妹のアムバリコ)は顔をそむけたため、生まれた王子は首のかしいだ(インドではアムバリコが顔を蒼白にしたので、顔色が蒼白の)六代目パンドゥ)だった。これがパンダワ五王子(主役)の父である。

サティヨワティアムバリコに、もう一度アビヨソとの間に子を成すよう頼むが、アムバリコは嫌がって、召使に自分の衣装をつけさせてアビヨソの元に送る。召使はアビヨソを見ると、驚きのあまり転んでしまい、生まれた王子は足の不自由なヨモウィドロ)だった。

結局3人の王子の中で、障害度の低いパンドゥが王位継承者とされる事が決定され、パンドゥが成長するまではアビヨソが王として在位。後見人としてビスモが3人に武芸と学芸を仕込んだ結果、長男のダストロストロは握力による超能力で未来を見抜く力を身につけ、次男パンドゥ)は弓矢の、ヨモウィドロは法の専門家となる。



03、パンダワ兄カルノ誕生

パンドゥは成長し武芸の腕をあげた。
ある時はプリンゴダニ)国のラクササ王トルンボコ)を退治し、又ある時はパンチョロ)国の婿選びの儀でも活躍した。
この儀式では、パンチョロ国の王子ゴンドモノ)が闘士として出場し、これを破った者は、その姉の王女と王国を手に入れられる、という決まりであった。

ゴンドモノに挑んだ者は次々と敗れたが、ジャワ島から遠い外国の武将ドルポド)が唯一拮抗した。パンドゥがこれに加勢したため、ドルポドは見事に勝利を果たし、王女を娶ってパンチョロ国王となり、一方のゴンドモノドルポドの宰相に身を落とした。

またある時は、後にパンダワの母となるクンティ)の婿選び儀にもパンドゥは出掛けていった。
クンティマンドゥロ)国の王女である。
美貌にして心優しく、ある日、貧しい苦行者ドルウォソ)に親切を施したので、ドルウォソクンティに、災厄を除き、天界の神を呼べる呪文を授けた。

この呪文には、ベッドや水浴場においては唱えてはならない、という条件があったが、クンティ)は婿選びの儀を明日に控えた日、この条件を忘れ、水浴中に呪文を唱えてしまった。現れた太陽神スルヨ)は、クンティに自分の子を宿させる。

婿選びの日、諸国の王や武将たちが大勢訪れても、肝心のクンティが顔を出さないので、訝しく思った兄王子バスデウォ)が妹クンティに尋ねると、妊娠してしまったと言う。

バスデウォドルウォソを呼び、妹を元の体に戻すように頼む。ドルウォソ)は難しい術である事を言い、「出産させられたら自分の子とする」という条件を出した。 兄妹がこれに同意すると、ドルウォソは超能力をもって神に祈り、椰子の葉肋をクンティの耳に入れた。すると耳から嬰児が誕生した。これがカルノ)である。
カルノの養育権をもつドルウォソは、カルノを螺鈿の箱に入れて北へ運ばせ、ガンガ川に流させた。やがて赤子はアスティノ国のある村に流れ着き、ダストロストロの馭者に拾われ、馭者夫婦に育てられた。

クンティ)の兄弟については、長男バスデウォは後にマンドゥロ国を継承して王となり、次男ルクモ)はクムビノ)国王、三男ウグロセノ)はレサンプロ)国王と、いずれも王国を持つ身になる。



04、パンダワ父母の出会い

ここに、クンティの他にもう一人パンダワの母となるマドリム)とその兄サルヨ)が登場する。
マドリムモンドロコ)国の王女である。兄サルヨはいずれその国王となる身であったが、気質の烈しい王子で、父王に結婚を進められるが気に入らず、妹マドリムを指輪に隠して国を出奔する。
途中に、やはりクンティの婿選び儀を聞きつけ、これに出掛ける山中で、ラクササ僧のバガスパティ)に出会う。

バガスパティは山中に住まうラクササで、形相は怪異だが魂は清く、弱者の救済を好んで行う慈愛の僧だった。妻が無いため神に祈りを捧げ、苦行の果てにスティヨワティ)という娘を得た。
このスティヨワティが、ある夜、夢に一人の青年を見て恋をする。バガスパティには、その青年がサルヨである事がわかり、娘の願いをかなえてやろうと旅に出て、サルヨ)と出会う事に成功したのだ。

サルヨは醜いバガスパティ)を一目見て申し出を断るが、闘いの末バガスパティに拉致されてスティヨワティに会う。スティヨワティ)が非常に美しい娘だったので、サルヨは彼女と結婚する。

サルヨスティヨワティを愛したが、その父バガスパティの醜さが気に染まず、ある日、クンティの婿選びの儀を思い出し、スティヨワティを説得して、再び妹のマドリム)を連れてマンドゥロ国に赴いた。

こうして向かえたクンティの婿選びの儀で、クンティ)は自分の婿にサルヨを指名する。
これに異を唱えたのが、ある国の王子グンドロ)で、彼は弟のスンクニ)や、後にコラワの母となる妹グンダリ)を同行して居たので、妹グンダリを賭けてサルヨ)に一戦を挑んだ。

しかしグンドロは敗れ、サルヨクンティグンダリを得たが、そこに遅れて到着したのがパンドゥである。サルヨパンドゥ)を見付けて勝負を挑んだが、戦いに勝ったのはパンドゥであった。
こうしてパンドゥは、クンティグンダリ)、そしてサルヨの妹マドリムを全て手に入れて、アスティノ)国に帰った。

     
  <一言>

自分の作った国も、子まで授かった妻(サティヨワティ)まで、他人(スンタヌ)にあげてしまう、えらく気前のいい修行者ポロソロとその子アビヨソ。
そして王位を遠慮するのみならず、自分に子が出来たら、その子が王位を狙うかもしれないからと、生涯不犯をアッサリと誓うビスモ。

最初にこの辺りを読んだ時「これってどういう事だろう(^_^;)」と早速アタマをかかえてしまいそうでした(笑)。ストイックなのか人格異常なのか、正直よくわからなかったからです。

が、後から振り返ると、この辺りは、いわゆる「古き良き(理想の)時代」をあらわしているのだと思います。強いて一言で片付けるなら「譲り合いの精神」ってトコですね(^^ゞ。

 
     



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