<マハーバーラタ・37〜40>
37、スリカンディ×ビスモの戦い ビスモ(☆)は今も戦争には反対だったが、セト(☆)の嵐のような猛撃を知って、食い止めようと立ちはだかった。両軍ともに「ガルダ鳥の陣形」で側面を補い、互いに矢を射掛けあう。ついに組み打ちとなり、ビスモは追い詰められて海に飛び込んだ。 海の底で母ガンガ女神(☆)に会ったビスモは助けを頼み、ガンガはセトの落とした櫛を渡した。 海から戻ったビスモは櫛を飛ばし、セトの胸に命中。ついにセトは戦死した。 ビスモはコラワ軍に戻ると停戦を求めた。パンダワ側も次々と死んだマツウォパティ(☆)王の三人の王子の死と、ビスモ(☆)と戦いあう悲痛に躊躇う。 これに苛立ったクレスノ(☆)はチョクロ(☆)をビスモに向け、ビスモも「ウィスヌ(☆)の化身クレスノに撃たれるなら本望」と答えた(自ら望まぬ限り死なない神授の力を与えられている)。 が、アルジュノ(☆)がクレスノを必死に止めたので、クレスノもマツウォパティ王の元に戻って、セト(☆)に代わる次の総指揮者にスリカンディ(☆)を推薦した。 オムボ(☆)を殺して以来、ビスモは女性を相手に戦う事を避けていたから、スリカンディの次々と放つ矢はビスモに当たらず、むしろスリカンディがヘトヘトに疲れて危うかった。見かねたアルジュノは、弓の弟子でもあるスリカンディに超能力の矢パソパティ(☆)をつがえ、ともに弓を引き絞ってやる。 その時「時間待ちの天界」から来たオムボの魂がスリカンディ(☆)に到来。オムボに乗り移られ、アルジュノの矢と力を借りて弓を引き絞ったスリカンディは、ようやくビスモ(☆)を仕留めた。ビスモは倒れ、パンダワとコラワ全軍から悲しみの声があがった。 ドゥルユドノ(☆)は純白のレースの枕と美味の飲み物を出したが、瀕死のビスモはそれを拒否して、ただ自分の死を最後に戦争を終わらせるよう進言した。 近寄ったビモ(☆)が棍棒を持つ手を変えたため、攻撃されると思ったコラワ軍は散り散りに逃げた。 アルジュノはクレスノ(☆)に教わり、折れた武器の束を枕にし、軍馬の飲み物を出し、それが戦士に対する作法に適っていたため、ビスモはそれらに満足して息絶えた。 ビスモの死体はパンダワによって火葬され、魂はオムボとともに天界に上った。 ビスモ(☆)を失ったコラワ軍だったが、子供時代のコラワとパンダワのシーソーゲームで、かつて遠い風の上の国に飛ばされたドゥルユドノの弟達、ボゴデント(☆)、クルティペヨ(☆)、ガルドパティ(☆)、ウレソヨ(☆)が、バラタユダ勃発と聞き付けて馳せ参じていた。ドゥルユドノは次の戦闘指揮者にボゴデントを指名し、副官にクルティペヨを任命した。 このクルティペヨとビモが互いに道行きの途中で出くわし、ビモはクルティペヨを倒して次の戦闘指揮者がボゴデントだと知る。本陣に到着したビモからこれを聞いたクレスノは、戦闘指揮者をスリカンディからアルジュノに変え、ビモ(☆)を副官に任命した。両軍はともに「怒れる象の陣形」で激突する事になった。 38、象戦士ボゴデント ボゴデントは巨象に乗って大暴れしていた。その象の調教師が美女であったので、例によってアルジュノ(☆)が、戦場でありながらナンパしようとすると、ボゴデント(☆)に吹っ飛ばされた。 真面目に戦う気になったアルジュノは、雨のように矢を降らせたが、ボゴデントは呪文を唱えて無数の毒蛇を放つ。アルジュノも呪文を唱えてガルダ鳥を呼び集め、毒蛇たちを食べさせたが、ボゴデントは洪水を呼び寄せる。アルジュノが旋風でこれを吹き飛ばすと、ボゴデントは鎖矢を放つ。 クレスノはこの鎖矢を見て、咄嗟に前に出た。クレスノに届いた鎖矢は、途端にジャスミンの花輪に化してクレスノの首飾りとなった。 アルジュノは「一騎討ちの邪魔をしてはならない」という戦のルール(☆)を持ち出してクレスノ(☆)を批難したが、クレスノは「鎖矢は元々ウィスヌ神が与えた物で、グル(☆)神から奪い返すように言われていた」と天界の掟を持ち出して却下した。(以後、何かと言うとクレスノは、「ルール違反」に対して「口で言い負かす」) ボゴデントはまだ暴れていた。アルジュノも気を取り直して応戦。 アルジュノ(☆)の矢がボゴデント(☆)の象に当たった。ボゴデントが象にひざまづいて泣き悲しむと、象は復活した。ボゴデントに矢が当たると、調教師ムルダニンシ(☆)が泣き悲しみ、ボゴデントが復活。ムルダニンシに矢が当たると、象が泣き悲しんでムルダニンシが復活。 尽きる事の無い復活劇に弱り果てたアルジュノ、従者スマル(☆)に「ボゴデントと象と調教師を同時に倒せばいい」と献策される。矢が同時に三本出る武器によって、ようやく三者ともに死に、アルジュノは勝利した。 ビスモについで、ボゴデント(☆)とクルティペヨ(☆)を失ったコラワ軍では、ドゥルユドノがガルドパティ(☆)を戦闘指揮者に、ウレソヨ(☆)を副官に任命した。 剛猛ボゴデントに対し、ガルドパティは頭脳戦を展開。「ビモとアルジュノを軍から引き離した隙に、本隊をついて総帥ユディスティロ(☆)を生け捕りにする」という作戦を打ち出した。 ドゥルノ(☆)が賛成し、ビモとアルジュノを軍から引き離す具体的手段として、「二人に挑戦的な言葉を呼びかけるのが良い」と追加献策。パンダワを教育したドゥルノは、二人の弟子の性格を熟知していた。さらにドゥルノは、二人のまだ行った事のない土地に誘い出すのが良いと、引き込む場所をセトロプル(☆)という寂しい山麓の沼地に設定した。 ガルドパティがビモを、ウレソヨがアルジュノを呼び出し、残ったパンダワ本陣をドゥルノが攻撃する事に決まった。 マツウォパティ(☆)王の幕舎では、アルジュノ(☆)の従者ペトル(☆)が、敵の戦闘指揮がガルドパティ(☆)に決まった事を報告。クレスノはビモを戦闘指揮者に、アルジュノを副官に任じ、ビモ(☆)に戦のルール(☆)を持ち出して「戦闘は長引いて暮れまでに決着する事はない」と深追いを禁じた。 39、ガルドパティの罠 戦場に出るとガルドパティがビモに「大勢の兵の中では邪魔が入る恐れがあるから、存分に戦い合える場所に行こう」と誘い出し、わざと後退してセトロプルにおびき出した。 クレスノの忠告がありながら、ビモとアルジュノは敵に挑戦を受けている手前、引き返す事も出来ずにズルズルと軍から離れた。そうしてセトロプルに着くと日が暮れてしまった。 ガルドパティは呪文を唱え、剣を大地に突き刺した。大地は一瞬で泥沼となり、ビモとアルジュノはこれに埋もれ、互いに互いを助けようとあがいてますます深みにはまった。泥を飲み苦しみの余り、敵に早く殺してくれと叫んだ。 ガルドパティはドゥルユドノ(☆)に状況を報告しに戻り、とどめを刺す許可を求めた。ドゥルユドノはすぐ殺すよう命令。セトロプルに引き返したガルドパティとウレソヨは、哄笑し悪口雑言しながらビモに近付く。 するとビモ(☆)は最後の力を振り絞り、ガルドパティ(☆)の武器を握る手を掴んで、逆にガルドパティを泥に引き入れ、ガルドパティとウレソヨ(☆)の体を足場に、ビモとアルジュノは地上に脱出した。 様子を見守っていたコラワ軍の兵はいっせいに矢を射掛けたが、ビモとアルジュノは疲労困憊の身でこれを避けて山の上に駆け上がった。 ガルドパティとウレソヨは土中に窒息死する。ガルドパティにはガルドコ(☆)という息子がいて、後にパンダワを父の仇と付け狙う。又ガルドパティ(☆)にはアンギロ(☆)という馬丁がついて来ていたが、アルジュノ(☆)に射られた矢で両足を失った。 この時パンダワ軍は、既にドゥルノ(☆)の総攻撃を受け、大混乱に陥っていた。 ドゥルノが師であるがゆえにビモやアルジュノの弱点を知り抜いているように、ドゥルノの攻撃をかわす方法を知っているのは、ドゥルノの愛弟子アルジュノだけだった。 しかしアルジュノは未だ遠いセトロプル(☆)山にいたので、残るは、アルジュノから伝授を受けているアルジュノの嫡子、アビマニュ(☆)に頼るしかなかった。 アビマニュはパンダワの継承者なので、戦場を離れたウィロト(☆)国の王宮に守られていたが、クレスノ(☆)はパンダワ五男サデウォ(☆)を使者に立てて呼んだ。 道行く途中サデウォは巨大な虎に襲われ、虎を仕留めた。虎はグル神の代行ナロド(☆)神だった。ナロドはサデウォに戦況を聞き、クレスノがアビマニュを戦場に連れ出す命令を出したと聞くと、大いに喜んで引き上げた。グル神は自分の渡した「ジタブソロの書」(☆)をクレスノが忠実に実行しているかチェックしていたのだ。 40、アビマニュの戦死 叔父サデウォからの伝令を聞くや、アビマニュは馬上の人となった。それを途中に見付けた敵将カルノ(☆)は、アビマニュ(☆)に危険を知らせる矢文を放った。供の者に命中した矢文を見ても、アビマニュは意志を変えず戦場に直行した。カルノはもう一度矢を放ったが、今度は愛馬に命中。アビマニュは冷静さを欠いて、伯父(カルノはアルジュノ(☆)の兄)からの忠告とも気付かず、むしろ敵意を剥き出しに猪突するのみだった。 ドゥルノは「車輪の陣形」で攻め立てていた。周囲の兵力を車輪のように旋回させて敵の目を晦ませ、機を見て敵陣に突っ込める陣形で、これに対してアビマニュは、自在に動ける「エビガニの陣形」で揉み込めば車輪を突破できる、とアルジュノに教わっていたから、自身がエビガニの先頭に立って突進した。 車輪の陣形は崩され、中心部にいたドゥルノ(☆)を敗走させる事に成功したが、アビマニュは退き方をアルジュノに教わってなかった。味方のエビカニ本隊は後退をはじめ、一度は崩された敵の車輪は元に戻り入口を閉じたため、アビマニュ(☆)は敵陣の中に孤立し、無数の矢を射掛けられ致命傷にいたった。 死亡してもなお仁王立ちするアビマニュに次々と矢が刺さり、彼はかつて第二の妻ウタリ(☆)に誓った如く、ざるの網目のような風穴を入れられた。 このように高名な武士を、一騎討ちによらず集団で射殺す事は戦のタブー(☆)であった。 唯一その頭上を風のように飛来し、一撃を食らわせたのはジョヨジョトロ(☆)だった。 その時、アビマニュの剣が「束になって掛かって来い」と言葉を発した。既にアビマニュが死んでいる事を知ったレスモノモンドロクモロ(☆)は死体に近寄り、挑発に乗って首を刎ねようとした。 彼はそのために重代の剣を抜いた。この剣はグル神の物だった。アビマニュの鞘が飛び回ってレスモノモンドロクモロの首をなぞり、毒が廻ってレスモノモンドロクモロは即死。レスモノモンドロクモロの抜いた剣は天界を舞って、グル(☆)神の元へ帰って行った。 アビマニュ(☆)の死体は、手足の長いアルジュノの従者ペトルが抱き抱えてパンダワ陣営に運んだ。駆けつけた妻のウタリは嘆きの余りアビマニュの後を追おうとしたが、もう一人の妻シティスンダリ(☆)が、ウタリが腹に宿すアビマニュの子の存在ゆえにこれを止めた。 シティスンダリは代わってアビマニュとの殉死を申し出、一人取り残されるウタリを慰め、宥め透かして、アビマニュの死体を焼く祭壇に身を投じた。 ウタリ(☆)は死後のシティスンダリが夫アビマニュ(☆)とともに暮らせるよう祈るしかなかった。 |
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