質問<五>
さすがは下剋上大名。殿様はガンガンと近隣を従え、それにつれて、あなたは順調に重要な城を任される所まで出世しました。
そんなある日、殿様が突然、あなたの居館に訪問なさる事になりました。名誉なことです。あなたは慌てて広間をしつらえ、家人に身なりを整えさせ、たくさんの御馳走を作り、良い酒をたっぷり用意して殿様の来訪を待ちました。殿様から、娘に良い縁談話などを賜れば大変名誉なことですから、妻や娘の衣服は格別に新調させて、殿様に御披露しました。
ところが皮肉なことに殿様が所望なさったのは、あなたの娘ではなく妻の方でした。むろんお酒の席での冗談半分です。あなたは……?
出世したとは言え、一城しか持てぬ自分の妻でいるより、側室でも殿様に仕える方が幸せかもしれない。妻には良く言い聞かせ、殿様に差し出して、自分は後妻でも娶る。
人妻を所望する殿様も殿様だが、言われるままに差し出す家来がいるのだろうか。断ったからと言って、だから罰を被るとか、出世が遅れるなんてことも考えられない。
丁重にお断りする。
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