<淀殿>
さん
より、一言
     



     
  まさに我が世の春、絶頂の時をお過ごしの由、お慶び申し上げます。むろん華やかな時とは、永遠につづくものではございませぬ。その事を心のどこかでお気づきであられるがゆえに、なお今の幸福が貴重に感じられるご様子。ほんに、子供の可愛い時期は、あっという間に過ぎまする。桜は輝くばかりに咲き誇るものの、散るのは早うございます。

大した身分にも居らなかった者が、突然豊かになれますれば、際限なき心配や苦労なしには維持できませぬ。それはむろん、経験しないとわからぬものにて、また、夏に冬の心配をしても始まりますまい。

ただ、強い日差しで葉が育ちすぎれば、日光が当たらぬ場所ができるものでございます。仕方のなきことながら、ご自分のために損する存在あるを、決してお忘れめされぬよう……。誰に対しても影日向なく、慈愛の精神で接して下さいませ。

波に流されるのを承知の上でなら、砂の城を作るのも宜しいではありませぬか。城が壊れても、何度でも機会は巡ってくるものでございます。
 
     




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